世界のちょっと変わった芝草刈り機を紹介するこのコーナー。
第2弾は、レーシング芝刈り機(!)です。
2013年まで話は遡ります。当時(秘かに)業界で話題になった芝刈り機がありました。
HONDA UKが発表したレーシングモア(注:モア=芝刈り機)です。
YouTubeなどでご覧になったことがある方も多い筈です。
共栄社も機械メーカーですので、社内には“クルマ好き”、“レース好き”、“機械好き”
がたくさんいます。
以前よりバロネスの芝刈り機を使った「ワンメイクレース」の企画は社内で燻り続けて
おり、HONDAのこのレーシング・モアのニュースを見たときは、皆「やられた」と
思ったものです。
HONDAと言えば、やはり、モーター・スポーツを連想される方も多いと思います。
そのスピリットとノウハウを芝刈り機に注入し、そして「最速芝刈り機」のギネス認定を
獲得するなんて、実にHONDAらしいアイディアです。
本編担当者にイギリス出張の計画があり、HONDA UKに取材を申し込んでいたの
ですが、残念ながらレーシング芝刈り機はアメリカに出張中、ということで実機には
会えず、広報担当者の方に取材させていただきました。
(本当は生であのブリッピング・サウンドを聞きたかったのですが・・・)
このレーシング芝刈り機は「Mean Mower」と名付けられ、今回は「2」となり2世代目
に進化しています。
今回進化した技術を採用して、更なる記録を打ち立てようと企画されました。
製作はBTCC(British Touring Car Championship/ブリティッシュ・ツーリング
・カー・選手権)でHONDAチームとペアを組むチーム・Dynamicsが担当。
新たな素材、3Dプリンターの活用などによって、1号機の約2倍のスピードである
241km/hを達成しています。
ベースとなったのは、HONDA HF2622 Lawn Tractorという芝刈り機です。
庭やちょっとした公園で使用される普通のロータリー・モア。
ちなみに共栄社でも同じタイプの機種を販売しています。
このベース芝刈り機よりフロントカウル、集草箱、ボディ・パネルを採用しました。
肝心の(?)ナイフ部分は電動モーター駆動に変更、つまり、ちゃんと芝を刈れる
訳ですね。
HONDAと言えばエンジン。肝心なエンジンはバイクのCBR1000RRから転用。
排気量は999ccで、13,000rpmで約190馬力のパワーを捻りだします。
ちなみにパワーウェイトレシオは0.99[kg/PS]。
加速がすごいと言われる日産GTRですら3.2[kg/PS]。
F1マシンで(時代にもよりますが)、1[kg/PS]を切りますので、ジェットエンジン
付きの紙飛行機、あるいは世界最高峰のバイクそのままのようなイメージです。
ちなみに0.99[kg/PS]を市販車で実現すると、「トヨタヴィッツに1,000PSの
エンジンを積んだ」と同じことです。
どの種目の車を持ってきても、この芝刈り機が遜色なく速いことが分かります。
あと具体的に、シャシーには柔軟性に富むT45素材を採用、設計~成形は3Dプリンター
を活用しています。
実は共栄社も3Dプリンターは重宝しています。
確かに立体的な部品の納まりの検証には必要なツールです。
大事なパーツであるブレーキも特殊仕様とのこと。
YouTubeなどで皆さんも、このMean Mowerのパフォーマンスを見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=LlVQtXLOzcM&list
ちなみにドライバーはイギリスのカート女王として有名なジェシカ・ホーキンスさん。
実にHONDAらしい広報戦略ですね。
その狙いを改めて伺ってみました。
「世界的な革新的企業の1つとして、スポーティなHONDAのイメージと評判、企業と
しての間口の広さを世界中のお客様にお見せしたかったのです。」
と広報担当者は答えてくれました。
確かに、その効果は出ています。
芝刈り機を求める一般ユーザーには同社のスポーティなイメージを、モーター・スポーツ
好きには同社の幅広い製品ラインナップが周知されたことでしょう。
F1とはまた違ったプロモーション戦略です。
共栄社は、ゴルフ場様とのビジネスに軸を置く芝刈り機メーカーですが、
もちろん、一般住宅や公園、サッカー場、河川等でも使える一般的な芝草刈り機も
開発、製造しています。
いつの日か前述のとおり、我々もこんな突飛な機械を作って世に出してみたいです。
共栄社の社長も大のクルマ好きですので・・・。
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