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11月29〜30日に名古屋大学 野依記念学術交流館にて
主催:JGIA全国ゴルフ場関連事業協会、後援:日本芝草学会・NPO芝草研究開発機構・中部ゴルフ連盟による
『2010 ジャパンターフショー芝草管理セミナーIN名古屋』が開催されました。
野依学術交流館は、野依良治名古屋大学特任教授(独立法人理化学研究所理事長)が
2001年ノーベル化学賞を受賞されたことを記念して
平成15年度末に名古屋大学東山キャンパス内に竣工されたものです。
今回は、その交流館を2日間お借りして
肥料農薬関係から機械設備関係に至る34のセミナーが行われました。
初日は、月曜日という事もあり、人出を心配しておりましたが、8:30頃より聴講者が見え始め
セミナーへの関心の高さがうかがえました。
セミナーは、1Fの中ホール@(約60名聴講可)・中ホールA(約60名聴講可)・小ホール(約30名聴講可)と
2Fの大ホール(約200名聴講可)を使用して
それぞれ1時間(質疑応答含む)の講演スケジュールで行われました。
また、1Fホール内に各出展企業のパネルが展示されたコーナーで
パンフレット等を手渡し、来場者の質問に答えたりする風景も見受けられました。
初日の29日、9:20にJGIAの山田会長より開会が宣言され
9:30より各ホールにてセミナーが開始されました。
弊社も例外ではなく、校庭緑化関連セミナー1種類とゴルフ場関連セミナー3種類の計4種類
のべ6回の講演を2日間に渡って行いました。要旨の一部を以下にご紹介いたします。
セミナー@ 校庭関連【スタートラインは校庭緑化!〜未来のゴルファーを育てよう〜】
過去の失敗を活かした現在の校庭緑化・メーカーが取り組んできた内容・
上手に芝刈機を使いこなすテクニック をご説明させていただきました。
校庭緑化は
教育文化活動・ヒートアイランド対策・地域苦情解消・地域交流・緑化対策などの
行政の諸問題を解決するツールとしてとらえられています。
校庭緑化は、行政や学校関係者のみでは決して成功することはできません。
現在は日本芝草学会の校庭芝生部会を柱に
身近な地域に校庭緑化を支援する団体(芝生応援団グラスルーター等)ができています。
我々はもとより、芝生管理のプロ(ゴルフ場関係者等)の経験、知識を活かした支援を必要としています。
芝生の上で遊んでいる子供たちの笑顔を思い浮かべ
芝生管理のプロが校庭緑化において支援できることを、メーカー共々一緒に考える必要性があります。
セミナーA ゴルフ場関連【斉一グリーン造成のための芝刈機開発と啓蒙】
2010年の日本芝草学会春季大会において技術部門賞を頂いた内容で
グリーンモアの構造的原理原則を細かくご説明することによって
少しでもグリーン造りにお役に立てればと考え、講演させていただきました。
近年のグリーンの低刈傾向に伴い、刈高のコントロールは
より高い精度が求められるようになりました。
刈高に与える要因としては
芝カス量と前ローラーの位置による影響・ハンドル操作による影響・前ローラータイプの違いによる影響の
3つが挙げられます。
また、アンジュレーションへの追従の重要度が増しています。
グリーンモアのアンジュレーションへの追従性としては、ベットナイフが接地して芝を傷める
いわゆる『カジリ』と凹部でベットナイフ中央が芝から離れてしまう『浮き』とがあります。
グリーンモアの場合、回転するリールカッターの刃がベットナイフに芝を寄せてカットするため
芝面には微妙な波面が生じます。
この波の間隔をクリップピッチと言います。
グリーンモアは進化し続けていますが、その中でもいくつかの課題があります。
まだ、確立されていない部分についてはゴルフ場管理関係者各位の
ご協力を頂きながら取り組んで行きたいと考えております。
セミナーB ゴルフ場関連【バロネスからの新提案@〜グリーンモアの特性を理解した管理〜】
今日までにバロネスが確認してきたグリーンの刈込データをご説明することによって
グリーンメンテナンスに新たなご提案をさせていただきました。
グリーンモアの特性としては、構造上の特性とセッティングにおける特性があります。
刈高変化に影響を与える要因・アンジュレーションにおける優位性・
クリップピッチの違いによる表面形状の変化・ベットナイフとリールカッターの位置関係・
リールカッター径の違いによる刈取量の変化の5つが挙げられます。
近年、芝へのストレス対策としてリールカッターの中心から水平方向にベットナイフの先端までの距離を
短くする方法『オフセット』が考えられています。
ベットナイフの位置を変更する(ベットナイフオフセット)場合は
ベットナイフとリールカッターの接触面積が大きくなり、メンテナンス問題が考えられます。
また、ベットナイフ台の位置を変更する(ベットナイフ台オフセット)場合は
ベットナイフ底面と芝面との距離が短くなることが考えられます。
これらについては、刈込調査試験を行い、刈込後の芝面をプリズムゲージで確認すると
ベットナイフ台オフセットの場合はベットナイフ底面で芝を寝かしていることが確認できております。
セミナーC ゴルフ場関連【バロネスからの新提案A〜芝生のクオリティとコース管理予算について〜】
コース管理における機械設備と芝生のクオリティについての関係を
効率化などの見地からご提案させていただきました。
現在のコース管理においては、コース管理費の削減が必須であります。
その反面では、ゴルフコースそのもののクオリティの低下という問題が伴ってきます。
コース管理の現状を考慮しますと、『作業の効率化』が求められます。
ゴルフ場においては機械の買い控えが打ち出される中
コース管理においては機械力に頼る大きさが増していると思います。
機械購入における資金のマイナス面は無視できませんが
ここでは機械がもたらすメリットを取り上げます。
作業時間の短縮では、乗用型などの効率の良い機械を購入することが一番簡単な手段であります。
他に労働量の減少・作業者の負担軽減・ランニングコストの低減・クオリティの向上を挙げることができます。
その関連性を図とグラフでご説明し、故障したら補充するのではなく
クオリティとコストを考慮された計画的な機械導入して頂くことをお願い致しました。
弊社は以上の4つのセミナーを講演いたしました。
また、他社さんのセミナーは、どうであったかというと
多くの聴講者がお見えになり、立ち見もでるほどの盛況な講演も多々あったようです。
その中でも今年の夏は
異常気象であったため肥培管理や水管理に対しての講演に聴講者が集中していたように感じました。
そして、このショーのメインイベントとも言えるJGIAと日本芝草学会のコラボレーション企画による
パネルディスカッションが二日目、30日の最終時間に大ホールにて行われました。
テーマは
今、ゴルフ場関係者が一番注目している問題『異常気象(温暖化、少雨等)に立ち向かうグリーンの管理』です。
総合司会は、理研グリーン(株)の矢口氏が行い
MCには、日本芝草学会の評議委員でもある大江康彦氏と椎木建氏(広島中央GC)を
パネラーには
三浦知宏氏(富士桜CC)、前花貢氏(嵐山CC)、豊崎宏道氏(グランデージGC)、藤原竜彦氏(岐阜本巣CC)
をお招きし、現場の貴重な声をお聞かせいただきました。
まず、各氏よりコース(立地、芝種、気温等)が紹介され、ディスカッションが始まりました。
そしてMCの大江氏より、トーナメント開催コースの三浦氏(富士桜CC)と、豊崎氏(グランデージGC)に
トーナメント開催における苦労話等の質問がされました。
MCを椎木氏にバトンタッチ後は、
4氏に「この夏の猛暑を乗り切るために行った特別な管理はありますか?」と質問が及びました。
各氏とも「毎年と変わった特別なことはしていませんよ。」となかなか本音を口にされないながらも
さすがしっかりとした考えをお持ちであり、猛暑に立ち向かう管理のポイントをお話されていました。
特に、防除や施肥、散水についてのお話が多かったように思います。
また、刈高のお話になった際、三浦氏(富士桜CC)が
「この夏を刈高3.0oで乗り切った」とおっしゃられた瞬間、会場からはどよめきが起こりました。
そして、藤原氏(岐阜本巣CC)は、バミューダグラスのグリーンを造成された経緯
管理についてお話されました。
藤原氏は、「バミューダグリーンは
ベントグリーンに比べ夏の管理は比較的楽で、夏でもお休みがとれていいですよ。
夏でもお客様にクオリティの高いグリーンを提供できますし・・・」
とおっしゃられておりました。
今年の夏は、猛暑の影響により全国各地でベントグリーンの被害が続出したということもあり
今後もこの猛暑が続くとなるとグリーンの芝種転換も、猛暑に立ち向かう検討材料の一つとなりそうです。
会場の様子については、皆様、真剣に耳を傾け、メモをとる姿が各所で見受けられ
関心の高さがうかがえました。
ディスカッションの終わりにはグリーンキーパーにおいては巨匠といえる存在の
日比野忠行氏(元太平洋クラブスーパーインテンデント)のお話もあり
この企画は大変貴重な場となりました。
『2010 ジャパンターフショー芝草管理セミナーIN名古屋』は
セミナー中心でパネル展示のみの初の企画でしたが、来場者も多くあり、大盛況のうちに終了しました。
私たちは、今後もこのようなセミナーによる情報提供の場を大切にしていきたいと考えていますので
今後ともよろしくお願い申し上げます。
最後になりましたが、お忙しい中、会場に足をお運びくださいました皆さまに感謝申し上げます。
(株式会社 共栄社 CS推進部 柴崎)
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