【1】 2011年のトーナメントを振り返って 第1回 |
▽・▼・▽・▼・▽・▼・▽・▼・▽・▼・▽・▼・▽・▼・▽・▼・▽・▼・▽
今回、福岡県にあります芥屋ゴルフ倶楽部のグリーンキーパーである廣川和幸様に
8月25日〜28日に開催された『VanaH KBC Augusta GolfTournament2011』の
トーナメント終了までのドキュメントを執筆していただきました。
トーナメントが終わるまでの、関係者との打ち合わせや、コースを管理する様々な出来事を拝見すると
あらためてゴルフコースは生きているんだと実感します。
今回は大会96日前〜8日前までのレポートです。
それでは貴重なレポートをお読みください。
2011年のトーナメントを振り返って
福岡県 芥屋ゴルフ倶楽部 グリーンキーパー 廣川和幸
この大会も1973年の第1回より数え今年で39回を終了しました。
最初の10年間は福岡市近郊の福岡カンツリー倶楽部で開催されていました。
芥屋で行なうようになってから29年です。
この29年間で大会の雰囲気、コースのセッティング、それに対するメンテナンスは随分変わりました。
特にグリーンに要求されるものが大きく変化しました。パッティングの際のボールの転がり、所謂スピードです。
スティンプメーターを使い数値で何フィートで表し、高い数値を目標とするようになり、競争となってきました。
この問題に触れれば長くなりますので、ここではこれくらいにして
トーナメント終了までの経過を順を追って記して参りたいと思います。
大会名 『VanaH KBC Augusta GolfTournament2011』
開催日 平成23年8月25日〜28日
会場 福岡県糸島市志摩芥屋1-1 芥屋ゴルフ倶楽部
5月20日大会96日前
コースの第1回目の下見
JGTOに主催者・テレビ関係・看板等設営業者・それにコース管理より4名と
日頃より芝作りのご指導を頂いているK氏などが同行した。
JGTOの理事・ディレクターがプレイしながらコースの状態をチェックして行く。
ラウンドが終了後、全員でミーティングとなる。その席でコースを見ての感想と意見が発表される。
昨年同時期に比較すると全体では良いようだが
「グリーンをもっと転がりが出るように作って欲しい」などの意見が出された。
『8月のコウライグリーン10フィート、厳しいなあー、けど今年こそ』
5月25日・大会91日前
バンカーの縁切り作業開始
全部で66個あるバンカーのエッジを切り、砂を移動し、面を整える。
エッジが綺麗に整備されていると、コース全体が格段に引立ちます。
6月1日・大会85日前
シルバー導入
大会の人員を確保するためにグリーン刈り込み要員として5名を導入した。
全員未経験者のため技術指導から始めたが、大会には全員戦力となった。
6月17日・大会68日前
グリーン周囲の雑木整理
この作業は今年になって急に始めたものではないが、ギャラリー目線でトーナメントを観戦しやすく
そして、年輪を重ねたクロマツが多く存在しているので、それを見せるために行なう。
6月24日・大会61日前
グリーン周囲の雑草処理
チドメグサ・ハマスゲなどの雑草が目立つのでインプールを撒く。
6月28日・大会57日前
17番フロントティーの改修
着工が遅いのだが、使用されていない通路や一部裸地が目立つ。
放映ホールでもあるので実施した。
完工し養生期間を経て大会16日前に使用開始したが
その間、大会用のティーを使用していた為ディボット跡が戻りきらなかった。
7月5日・大会50日前
グリーンの今年第1回コアリングを実施
タインの径が8ミリを使い深さ72ミリのコアを抜き
目砂を入れ、擦り込んだ後、ローラーを掛けて仕上げる。
7月8日・大会47日前
フェアウエイに施肥
有機化成(N10−P6−K3)20g/u。
7月22日・大会33日前
フェアウェイの一部に軸刈りが発生
今年はカートの乗り入れ制限を実施。その影響もあってか芝は元気でいいのだが
この状態では大会の刈高12ミリは実現できそうにない。
そこで一旦軸刈りの進行を防ぐため刈高を今の14ミリから16ミリに上げた。
7月24日・大会31日前
フェアウェイやラフなどの芝が焼ける
ここ10日間の降雨量の合計は2ミリを下回り、水不足のため芝が
黒っぼくなりだしたので、夜間に自動で全ホールに水を撒き始める。
結局8月の13日まで連続で21日間撒くことになった。
この間にも昼間の補助散水を欠かさず、焼けの拡大を防いだ。
7月25日・大会30日前
グリーンにバーチカルを掛ける
グリーンは芽数が多くマット状になり現在3.5ミリでの刈り込みの際に手押しモアが真直ぐに進みにくく
また転がりも8フィートに届かず目標の10フィートには程遠い。
まず芽をすいてやり、砂を入れない事には改善は望めないと思い
乗用モアにバーチカルユニットを取り付け、マイナス3ミリで掛けた。
20面あるグリーンをグリーンごとに少し深さを変え、ダブル掛けやトリプル掛けをする。
平均750uあるグリーンから砂やサッチが軽トラック軽く一台位出た。
バーチカルが終わると次の刈り込みの前に砂を入れて擦り込む。
20面で30トンの焼砂を入れた。作業が終わったグリーンは磨いたような光沢が出た。
時期としてはあと一ヶ月程前に、この1回目が出来れば良かったと思った。
7月29日・大会26日前
第2回目のコース下見
関係者10数名で早朝6時30分位からコースへと繰り出す。
前日は本番に備えて、フェアウェイやティグランドはクロスカット。
ラフ以外の刈込みをすべて行い、当日のグリーンは刈高こそまだ4.5ミリだがローラーを掛ける。
今日はかなり緊張する。どんな事を言われるのかドキドキです。
グリーンはまだ砂が見えてる状態で濡れていると、ボールに砂が付きます。
いよいよグリーンに上がりディレクターがカップめがけてパッティング。
ボールはやや上りのラインをカップの横10センチ位で止まった。
無言で10センチのパットを沈めボールを拾い上げると
うなずきながら私の顔を見て「転がりいいんじゃないですか」。
ほっとして緊張が少し解れた。
その後もディレクターは昨年のグリーンの印象がよほど強かったのか
「今年はグリーン頼みますよ」と大会直前まで何度となく私に言っていた。
日に日にプレッシャーが増していった。
コース全体が水不足でフェアウエイやラフはかなり焼けていて
それを心配する関係者が多かったが、ラウンドを終えての感想で
コースセッティング理事から
「今年は良いコースコンディションなので大会が期待できそう」
と嬉しいコメントがあった。
8月1日・大会24日前
バンカー縁切り2回目終了
8月3日・大会22日前
グリーンに目砂入
細めの砂を0.4ミリ厚で入れる。
8月4日・大会21日前
フェアウェイのバーチカルを断念
雨が降らずフェアウェイに芝が焼けている部分が多くあり
機械の踏圧によるダメージが予測されたのでバーチカルを断念。
同時に目砂もやれなくなった。結果として刈高を下げる事が出来なかった。
グリーン周囲のラフを40ミリで刈る
大会前の最後の刈り込みである。
8月5日・大会20日前
フェアウェイの芝刈機械が準備完了
手持ち3台にデモ機1台を借りれることになり4台が揃う。
しかし4台が同じ機種ではないので刈り幅が狭い2台を
放映ホールがあるインコースに使用する事にした。
8月8日・大会17日前
バンカー周囲の刈り込み
乗用3連モア・フライモアで刈り込む。
8月10日・大会15日前
左右のラフ刈り込み
7連ギャングモアと5連ロータリーモアを使いフェアウェイ両サイドの
ラフを60ミリで刈込む。
8月11日・大会14日前
グリーンに第2回目のバーチカルを掛ける
前回の半分のマイナス1.5ミリですべてシングル掛け、同時に焼き砂も入れる。
今日の刈高4.0ミリ。
カート路改修工事完了
今年の4月4日よりカート路の全面改修に着工。
芝生管理のシーズンと重なり、大会までに終わるだろうかと大変気になっていたが
本社を含め全員で暑い中、芝張りをして間に合わせる事が出来た。
8月12日・大会13日前
グリーンのタ方刈りを始める
朝は26吋の手押しモアで刈り、午後4時頃から乗用モアで刈る。
刈込み回数を増す事で葉先を揃え芽数を増やし、面を整えて行く。
8月13日・大会12日前
13番ガードバンカーの法面補修
人がバンカーに出入りする場所のせいか足跡状に芝が傷んでいる。
今、張替れば間違いなく修理地となりそうだ。なんとかそれは避けたい。
悩んだ末、傷んだ部分のみを切り取りその部分に厚く剥いだ芝を差込み。
目串を深く打込み見えないようし、仕上げに周りの芝と同じように葉先を揃えた。
この部分は大会終了まで修理地になることもなく、トラブルもなかった。
8月14日・大会11日前
ティーインググランド周囲の刈込み
乗用ロータリーモアとフライモアで短く刈り揃える。
そしてティーからフェアウェイまでのラフは短くして清潔感をだす。
今日のグリーン刈高は3.8ミリ、転がりは8フィート弱。
8月16日・大会9日前
大会の作業の担当を発表する
昼のミーティングの時に全員に資料を渡し説明する。
殆どのスタッフが昨年までの経験があるので大きな混乱は無かったが
一部には作業に対し殆ど経験のない者もいた。
林内の刈り払い作業にアルバイト4名導入
林の中の雑草を短期間で刈り払わなくてはならず
アルバイトに機械を持ち込みで作業をお願いする。
8月17日・大会8日前
グリーンに目砂入れ
細めの砂を0.2ミリ厚で散布する。
大会前に撒く砂としてはギリギリのタイミングである。
しかし撒かないと3.2ミリカットは厳しく10フィートは無理と思われる。
以後雨が続き、大会の時にはすっかり馴染んでいた。
次号へ続く…
(芥屋ゴルフ倶楽部 グリーンキーパー 廣川和幸)
次回は大会7日前〜大会終了までのレポートをお送りいたします。
|