【1】 2011年のトーナメントを振り返って 第2回 |
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前号に引き続き
芥屋ゴルフ倶楽部のグリーンキーパー 廣川和幸様による
『VanaH KBC Augusta GolfTournament2011』
のトーナメント終了までのドキュメントをお送りいたします。
今回は大会7日前〜決勝当日までのレポートです。
それでは貴重なレポートをお読みください。
大会名 『VanaH KBC Augusta GolfTournament2011』
開催日 平成23年8月25日〜28日
会場 福岡県糸島市志摩芥屋1-1 芥屋ゴルフ倶楽部
8月18日・大会7日前
グリーンの刈高を3.6ミリにする
8月19日・大会6日前
グリーンローラーを掛ける
大会時には2台のローラー掛けを予定しているが
担当者の経験が浅く練習も兼ねて行なう。
樹花木の剪定
松をはじめ、コース内のティーグランド周囲やクラブハウス周辺の樹木を剪定する。
作業は外注で行なう。
8月20日・大会5日前
ティーインググランド前ラフの刈込み
ティーインググランド前からフェアウェイまでのラフを
40ミリ位で短く刈り揃える。
グリーンに藻の防除剤とフェアリーリングの防除剤を撒く
3〜4面に藻が発生し、リングも目立つので薬剤を撒いた。
グリーンの刈込み機械をハイクリップモアに変える
グリーンは26吋の旧型モアで刈っていたが
大会にはハイクリップモアを使用するので、機械に慣れる為にも今日から使い始める。
刈高は3.4ミリ。
8月21日・大会4日前
コース内の備品の撤収
散水ホースをはじめ、カート規制のローピング等をすべて取り除き
来週からの大会に備える。
8月22日・大会3日前
練習ラウンド開始
いよいよトーナメントウィークに突入、選手が本番設定のコースで練習を開始する。
明るくなると同時にグリーンの刈込みに入る。
今日から刈高は3.2ミリのダブルカット、ローラーを掛ける。
この日からタ方も手押しモアで刈る。
シングルカットで一人4面を刈る。選手からどんな声が聞こえてくるのであろうか不安と期待で落着かない。
今日は昼間35ミリ程の雨が降り、バンカーの砂が流れてしまった。
雨が止んだら修復作業をする。出だしから大変だ。
5連ギャング油漏れ発生 (※他メーカー製です)
13番ホールのフェアウェイ入りロからセカンド地点まで
油圧ホースが破裂し、多量のオイルが噴出。即、中和剤を散布し水洗い。
その後の降雨も良かったのか、殆ど芝が変色する事も無かった。
急遽代わりのモアを手配しなければならず、快く協力して頂いた他コースに感謝いたします。
17番のガードバンカーの縁が雨で浸食、陥没
8月23日・大会2日前
ヤード標示杭撤去
グリーンまでの残り距離は直径65ミリの擬木を立てて標示しているが
それをすべて取り除き、一旦管理棟に保管する。
17番ガードバンカー陥没箇所修復
うまく修復出来たと思ったが、修理地となる。
8月24日・大会1日前
降雨・雷で中断
日中に降雨・雷で競技も練習も中断。その後プロアマ競技はハーフで終了、練習も2組程出来ただけだった。
また、午後の作業ではフェアウェイ刈りなどは出来なかった。
競技委員会開催
クラブハウスで関係者のミーティングがある。
グリーンのコンディション等が記載された資料を渡され、期間中のメンテナンススケジュールなどをチェックする。
明日からの本競技に備えるための最終打ち合わせである。
ちなみに今朝のグリーンコンディションは、転がり9フィート・コンパクションは22であった。
目標の10フィートに届かず、明日はもう少し速くなるだろうか。
速くなることを臨む雰囲気が漂う。
バンカー流出砂の修復
雨が止んでからコース管理総員で流れた砂を戻す。
8月25日・大会1日目
予選ラウンド1日目
久々に太陽が見られ予定の作業がすべて出来た。ホッとする。
本日のグリーンは朝、非公式ではあるが念願の10フィートを記録した。
ちょっと自分でもびっくりした。
ここ数日、日照が無く芝が柔らかくなったのが原因であろうか。
何れにしろこの時期に10フィートは嬉しい。日没まで作業は続く。
8月26日・大会2日目
予選ラウンド2日目
朝のグリーンの刈高を、連日の雨のため面が柔らかくなったので
0.2ミリほど上げ、ストレス回避でローラーも省いた。
雨は殆ど無かったが雷で2度にわたる中断があり、日没となり6組がホールアウト出来なかった。
午後の作業はティー刈りが一部出来たが、他は全部中止となる。
その間に明日に向けてのメンテナンスの打ち合わせをディレクターや競技委員長と行なう。
明日は前日残った組を午前6時半より一斉にプレイ再開させる。
対象となるホールはアウトイン合計で7ホール
その前にグリーンの芝刈りとバンカー均しは、必ず終わらせなければならない。
それをコースのスタッフに納得いくまで説明し
何度も頭の中でシミュレーションを繰り返し、全員の動きを決めた。
8月27日・大会3日目
決勝ラウンド1日目
夜明けと共に作業開始。
グリーンの刈込み10名、ティーの刈込み2名、バンカー均し10名、カップ切替2名。
前日の残りの競技が6時30分より始まる。それまでにグリーン・ティー・バンカーを整備しなければならない。
時間に余裕がない。
作業は刻々と進められて行き6時15分には準備が終了し、競技が予定通り6時30分より始まった。
それが終わり次第、決勝ラウンドに向けて準備が始まる。
グリーン刈り、ティー刈り、バンカー均し、カップの切替を最初から行なう。
今度は時間に少しの余裕はあるが気を抜けない。
全員のテキパキした動きによって今日の作業は無事終了した。
8月28日・大会最終日
決勝ラウンド2日目
朝6時の開門と共にギャラリーが押し寄せる。天気も良い。
グリーンの刈込みをしている時にも大勢のギャラリーがコースを抜けていく。
中には作業を興味深そうに立ち止まって見ている人もいる。
こんな光景をもう何年となく見てきた。
最終日は特に一つ一つの作業が終わるたびに気持ちが楽になって行く。
朝の作業は順調に進んで行く。グリーンは3.2ミリのダブルカット。
その後ローラー掛け、そしてカップ切替、バンカーはすべて手均し。
あと30分もすれば作業がすべてが終わりそうな時
ローラーが最後の1ホールを残し動かなくなった。
修理がすぐ出来そうな状態ではない。急いで代わりのローラーを準備し現場へと向かう。
この時すでに競技は始まっており、現場に行くには大勢のギャラリーを掻き分けながら
ゆっくりゆっくり移動して行かなければならず、大変だった。
何とか作業は間に合い胸を撫で下ろした。
競技の方も盛り上がり、優勝争いも2打差以内で最終ホールまで、もつれ込んだ。
プレイオフの準備をするように、トランシーバーから聞こえてくる。
プレイオフは18番ホールを使い、決着が付くまで繰り返す。
私は過去に1度経験した。
コース管理から2名の要員をグリーンサイドに待機させゲームの行方を見守る。
プレイオフは回避された。優勝スコアーは22アンダーだった。
午後2時15分頃、予定通り競技はすべて終了し
しばらくしてディレクターや競技委員長、その他色んな方々と挨拶を交す
「お疲れ様でした。」
コースでは明日の営業に備えてヤード標示杭やティーマークなどを元に戻す作業や
ギャラリーが残していった塵などを片付ける作業をしている。
これらの作業が終わってしまうと、やっと大会が終わったなという実感が湧いてくる。
(大会が終わって)
弊社ではオーガスタに向かって
『オーガスタまでにはやるんだ』
を、目標に社員全員が一年間頑張っております。
特にコース管理にとっては年の始まりであり、終わりでもあります。
やっと終わったと思ったら、もう来年に向かって動き出しております。
梅雨が終わり気温が急上昇してくると、大会を強く意識してくるようになります。
30度を超えるような暑さの中、バンカーの縁切り作業は
過酷で毎年体調を悪くする者も少なくありません。
しかし、それを乗り越えられるエネルギーは、辛さの向こうに待っている達成感や満足感があるからです。
ギャラリーのみなさんの「綺麗なコースですねえ」や
選手の「良い仕上がりをしてますねえ」が聞きたくて日々頑張っています。
毎年、奈良県から観戦に来られるファンの方がいらっしゃいます。
大会中なのでゆっくりお話しする事は出来ませんが
終わってメールで気持ちを伝えたりしてます。
有り難いです。嬉しいです。
こういった方々がいらっしゃる限り、これからも大会が続いて行く事を望みます。
大会を応援してくださる方、コースを愛してくださる方本当に有難うございます。
来年も皆様に喜んでいただける大会になるよう努力いたします。
(芥屋ゴルフ倶楽部 グリーンキーパー 廣川和幸)
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